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ぜん息・COPDと新型コロナウイルス感染症の関係

コロナウイルス感染症は従来風邪症候群と言われる、いわゆる鼻風邪を引き起こすウイルスの一つとして知られていました。ウイルスは自己の生存のために変異という形でより強力になり感染力を増します。今回の新型コロナウイルスは強力な変異ウイルスで、まだ人類が免疫を作れていない状態です。

環境再生保全機構 すこやかライフ編集委員長 昭和大学特任教授 田中一正環境再生保全機構 すこやかライフ編集委員長
昭和大学特任教授 田中一正

気管支ぜん息の方へ

気管支ぜん息発作の要因として、小児および成人患者さんの60~80%以上 に、RSウイルス、ライノウイルス、インフルエンザウイルスなどによる気道ウイルス感染を認めたと報告されています。
ぜん息患者の方々は、ウイルス感染が発作の誘引になることはよくご存知だと思いますので感染しないように注意しましょう。

ここで、今一度確認しましょう。
長期管理薬としての吸入ステロイド薬は継続していますか?
今の時期、絶対にやめてはいけません。吸入ステロイド薬を含む長期管理薬は症状悪化を防ぐ唯一無二の治療薬です。ぜん息は適切に治療を行っていても咳や突然の息苦しさなどが出て、完全に避けることが難しい病気です。常に吸入ステロイド薬の定期吸入が出来ていないと悪化の要因になることを今一度認識してください。

『最近調子が良かった』
『症状が出ていないから投薬をしなかった』
『忘れていた』

それぞれ理由があるかもしれませんが、気道ウイルス感染での悪化を防ぐには、長期管理薬を日頃から続けることが一番大事です。
ぜん息症状が出てしまったら、酸素を取り込む呼吸がどんなに大変か、ぜん息発作の経験のある方にはよく分かると思います。周りの方々とも確認してください。処方されているとおりに吸入器を毎日使うことがもっとも大切です。

お薬は予備がありますか?

今後、諸外国のように外出禁止になる前に、治療薬を確認して1か月以上の予備を用意するようにかかりつけ医とご相談ください。定期受診のある方でしたら、医師との電話相談でかかりつけ薬局からお薬の送付も可能な場合があります。
不定期受診でお薬が心配な方は不要不急にはあたりません。早急に医師と相談して投薬を受け、より良いコントロール状態を保ってください。

ぜん息治療の差し控えはぜん息発作およびその重症化をきたす危険性が高まります。
一般的なウイルス感染症による気管支ぜん息の急性増悪(発作)時では、 通常の発作時治療に準じて治療をしています。

今回の新型コロナウイルス感染症の罹患時も、通常の安定期・発作時のぜん息の治療に準じて治療を行うべきと日本アレルギー学会はガイドラインを示しています。専門の先生方に相談してください。ただし、長期管理薬や発作時治療薬など何をどう使っているかがわかるように、お薬を持参して受診をしてください。

慢性閉塞性肺疾患の方へ

多くの患者さんは定期治療薬として吸入薬を使用しておられると思います。
やめないで継続してください。少しでも換気改善ができるよう治療薬と胸郭のストレッチを継続し、ゆっくり大きく呼吸を整えることを日々の努力に加えてください。

残念ながら、喫煙中及び喫煙歴のある方は「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」の論文で重症化率が24%と高い結果が出ています。これは、重症者の割合は非喫煙者に比べ喫煙経験者の方が1.7倍多かったという結果です。

喫煙経験の有無と新型肺炎の重傷者の割合の関係出典元:米医学雑誌「ニューグランド・ジャーナル・オブ・メディシン」2020年2月28日 ※中国の患者 1099人の分析による

周囲に喫煙者の方がおられたら、是非受動喫煙になる行為をやめて頂けるようお願いしてみてください。こんな時期だからこそお互いを思いやって生活したいですね。

すでに多くの注意喚起がされている感染予防対策の話をします。

一番大事なことは手洗いです。ハンドソープで10秒もみ洗い後、流水で15秒すすぎの方法を2回繰り返すのが最も手に付いた菌数を減らすのに有効とのデータがあります。
また、常に爪は短く切り、手洗い時には指先の汚れをかき出すように手洗いを行うことが望まれます。
外で何かに触れたら、その手で自分の身に着けているものや髪の毛や皮膚は触らず、触る前に手指を消毒しましょう。消毒液の持ち歩きも大事です。消毒液は玄関先でも家に帰った時に使えます。
除菌用のアルコール消毒は70~80%濃度のものが有効です。

正しい手の洗い方出典:首相官邸HP

咳エチケットも守りましょう。マスクのない状態でなかなか大変なことかと思いますが、手作りマスクなど工夫しましょう。ぜん息の咳が疑いの目で見られ嫌な思いをすることがあるかもしれません。少しでも咳の出ない良い状態にコントロールし続けましょう。